« | トップページ | デンタクオタク »

2010.09.18

リバイバルストーリー オブ 「株屋の裏」


今を遡ること10年。

世紀末。

インターネットバブルのド真ん中。

モルガンスタンレーのメアリー・ミーカーが「インターネットの女王様(Queen of the Net)」 と祭られ、フランク・クアトローン が「テックバンカーの帝王」として君臨していた時代の物語だ。

一世を風靡し、閉鎖した後も「伝説」として金融関係者の間に語り継がれるウェブサイトがあった。いや、閉鎖したために「伝説」にまで昇華したのか。その名は「株屋の裏」。または「株屋の裏口」。「裏口」は改題する前の初期のネーミングだ。

あれから10年が経った。Nasdaqは2000年3月10日ピークを付け、ドットコムバルブは崩壊し、業界は水浸しの災害に見舞われた。

さらに悪いことが続いた。

テレビに映し出されているのは、ビルの火災。現場は地球の裏側か? 黒煙を上げ、燃えるビル。レポーターが興奮して何かをしゃべっている。

それは次の瞬間だった。小さな飛行機が隣接するもう1つのビルにあっと言う間に突っ込み、派手な火炎がパッとあがった。いや、飛行機が小さく見えたのはそのビルが巨大であったからの錯覚だろう。そして、空を仰ぐ2つの巨大な富の象徴は粉塵とともに瓦解した。

白い館でビルが自分の椅子に座っている。その前にモニカがひざまずき、ビルの堅くなったモノを引っ張り出した。そして上目遣いでおいしそうにおしゃぶりし始めた。

不思議なことに、モニカがビルのペロペロキャンディをおしゃぶりすればするほど、株価は上がった。ビルがモニカと不適切な関係を続け、ホワイトハウスの夜に燃えれば燃えるほど、経済は活発になった。まるで魔法だ。富める者と奪われる者。格差は徐々に広がっていったが、活発な消費で皆がそれなりに幸せだった。

僕がそのウェブサイトをスタートし、更新を止め、そして閉鎖したのはまさにそのような時代だった。気まぐれと冗談で作り始めたコンテンツだ。隣接した業界へ移ったために外資系証券・投資顧問会社のリサーチ、運用部門の内幕を描くことに利害関係がなくなったことも後押しした。あまりにふざけた内容ではあったが、プロフェッショナルゆえ関係者との利害関係やクライアントとの守秘義務には神経質にならざるを得ない。

その反応は驚くべきものがあった。

最初、一般投資家の方々に業界内部の人間模様を知っていただくことを第一に考えた。しかし来訪者のサーバーを見ると、国内系、外資系証券の人たちが仕事の合間を縫って閲覧し、楽しんでいる様がありありであった。また、テキストだけがコピペされ、メールに添付され、業界内に回覧された。毎日新聞エコノミスト誌がそのサイトを無断で5ページに渡りパクり、「外資系証券の内幕を描く怪文書」として記事にした。

ではなぜ、更新を止めてしまったのか? そしてサーバーからすべてを削除してしまったのか?

当時、2ちゃんを始めとする掲示板サイトで「株屋の裏」は話題になり、一部ではそのアホさ加減の内容により、批判やお叱りをいただいた。止めた理由を「荒らされてあえなく閉鎖」と某掲示板に書かれたりもしたが、それは100%違う。「株屋の裏口」(初期のコンテンツ名)ではBBSも併設し、外資系証券のリサーチに興味を持つ学生さんらが多く集い、さしずめ外資系証券就職相談所の体をなしていた。BBSが荒らされたことは一度もない。某掲示板では「資産運用業界の実態が分かる非常に有意なコンテンツ」との評価をいただいた一方、「こんなこと書いても何の得にもならない無価値なサイト」と酷評もされた。しかし批判的な意見はどう贔屓目に見ても、まともに仕事をしていないファンドマネージャーの強がりにしか見えなかったために、その意見は支持されなかった。

更新を中止し、閉鎖した理由は、それを開始した理由の逆である。

著作者が再びその業界に舞い戻ってしまったために、顧客(運用業界)のネガティブな実態を暴くことが難しくなったから。いわば利害関係の問題が再生したのである。

白い館の主はネットバブル崩壊の最中に、ビルからジョージに変わった。モニカはご主人様を失った。モニカがビルと別れると不思議なことに株価は暴落した。魔法は解けたのか。アメリカは不幸な戦争へ突入した。

そして、ネットバルブの廃墟から数年が経った。

業界のリクイディティは再び拡大していった。いや、単なるリターン・リバーサルかもしれない。再び泡沫は膨らみ始めた。今度はアメリカの不動産バブルだ。

もう立たなくなってしまったジョージ爺さんのふにゃふにゃのマシュマロをおしゃぶりする女の子が現れたとはとても思えない。一体全体誰が誰のマシュマロをおしゃぶりし、世界経済を鼓舞したのか。誰が再び魔法をかけたのか。

かつて戦火に見舞われた湾岸地域に地上の楽園が出現した。

しかしそれはうたかたの夢。

僕がかつての「株屋の裏」コンテンツを復刻版として復活させようと考え始めたのは、未だに人々の間で「株屋の裏」が語り継がれていることを知ったことがひとつの理由。今となって読み返してみると、一部に事実誤認や稚拙な表現や、書き足りないことが散見され、かなり気恥ずかしい。しかし、その稚拙な部分や恥ずかしい部分も含めて、みんなでインターネット産業を賞美し、単なる携帯電話屋の「ひかるちゃん」(光通信)をPER200倍でも「割安」と称し買い上がり、商工ファンドを臆面もなく絶賛した、あの時代を「株屋の裏」が象徴しているのではないか、と感じたのだ。

何のことはない。みんなで買ったソニーや光通信やソフトバンクをポートフォリオに持っていさえすれば、仕事時間中に「会社訪問」と称してソープランドに行ったり、総務の人妻さんと渋谷のラブホに入り浸ったり、そんなことをしても自分のポートフォリオのパフォーマンスは抜群でびっくりするようなボーナスが貰えた時代である。ひっそり静まりかえる深夜のオフィスにガールフレンドを呼び出し、机の前に跪かせ、おしゃぶりしてもらうビル。東京でもワシントンDCでも同じような光景が繰り返された。ペロペロキャンディは萎びることを知らず、ぐいぐい上を向いた。そう、株価と同じように。

そんなドットコムバブルのどんちゃん騒ぎを描いたコンテンツをネット上に残しておくことは、意義がある、と僭越ながら考えたのだ。

時は2010年秋。

サブプライム・モーゲージのバルーンは限界まで膨らみ、そして破裂した。世界は再び暗黒の闇に包まれた。今、世界経済はどこを漂流し、どこに向かおうとしているのか? 救い主は来るのか?

しかし歴史は繰り返す。

復刻したコンテンツは10年前のものであるが、その多くは未だ古さを帯びていない。なぜなら「株屋の裏」のメインテーマが、「人間の欲望、つまりカネとオンナ(オトコ)」だからだ。そして、おそらく100年後も資本主義と地球と人類が続く限り、マーケットはバブル(暴騰)とバスト(暴落)を繰り返し、「株屋の裏」は「悪魔君」や「墓場の鬼太郎」のように何度も蘇ることだろう。 

過剰なリクィディティは次、どこに向かうのか・・・・僕はそれが楽しみだ。

<面白い!と思ったら↓ポチっとクリック。ブログランキングに参加中>

人気ブログランキングへ


« | トップページ | デンタクオタク »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1413303/36796114

この記事へのトラックバック一覧です: リバイバルストーリー オブ 「株屋の裏」:

« | トップページ | デンタクオタク »

お知らせ

  • (C) Kei@kabuyanoura, all rights reserved. 当ウェブサイトのリンクは自由です。引用は出所を明示してください。著作者への連絡は以下のメール送信フォームをご利用ください。
無料ブログはココログ