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2010.09.17

株価レーティングの読み方


従来、機関投資家にのみ提供されてきた証券会社の調査レポートが、インターネットなどを通じて一般投資家へも渡るようになってきました。当然、これ は裕福な個人投資家を囲い込むことが目的であり、また、世界的に、ホールセールに特化してきた投資銀行(大規模な調査部隊を持っている)が、リテール網を 持つ証券会社(ディスカウントブローカーは調査部を持たない)と合併し、個人投資家へのアクセスを持つようになってきたという背景もあります(モルガンス タンレーとディーンウィッターの合併が好例)。

日系や外資系証券の調査レポートに書かれた「株価レーティング」。今回はその読み方を解説します。当COMMENTARYの「アナリストはどのよう にして売りか買いかを決めているか」でも、レコメンデーションの内幕を部分的に書きましたが、今回は「個人投資家のための株価レーティングの読み方」で す。

株価レーティングは、証券会社によってさまざまで、ポジティブなコードは、買い、BUY、OUTPERFORM、STRONG BUY、1、A、・・・などがあります。その反対は、売り、SELL、UNDERPERFORM、5、C、・・・。中間のニュートラルな意見は、持続、保有、HOLD、MARKET PERFORMER、3、Bなどでしょうか。5段階評価をしている会社では、ACCUMULATEなんてのもあります。

通常は、絶対パフォーマンスではなくて、ベンチマーク(普通はTOPIX)との相対評価なんで、TOPIXよりも株価が上がると予想されれば、「買い」になります。つまり、原理的にはTOPIXが30%下がって、その株が10%しか下がらない予想なら「買い」です。

これらのレーティングは、アナリスト個人がつけます。もちろん所属証券会社の固有の事情(IB絡みであることが大半)もありますが、基本的には「ア ナリスト個人の意見」です。したがって、個人投資家の利用者はNTTドコモ株は「野村では買い」、「大和ではホールド」、「日興ソロモンではストロングバ イ」、「メリルでは売り」・・・ではなくて、鈴木さんは買い、佐藤さんはセル、高橋さんはストロングバイ・・・と受け取らなくてはいけません。つまり、個 人のアナリストとしての実績や知名度で、レーティングを解釈してください。

「野村のレーティングは当たる、外れる」という評価は、したがって、意味がありません。「鈴木アナリストのレーティングは当たる、外れる」という尺 度で考えてくださいね。同じ証券会社に属しているアナリストでも、レーティングを良く当てるアナリストと、頻繁に外すアナリストがいます。なかには、株価 の底値で「売り」レーティングを出し、株価が天井を付けたところで「買い」を発表する人がいます。つまり、彼が「売り」推奨を出したら、投資家は安心して 買えるわけで、このようなアナリストの存在は非常に貴重です。またレーティングを外しまくることで有名なAさんが、野村からGSへ移っても、外しまくるこ とに変わりはありません。

アナリストの推奨はどのくらい当たるもんでしょうか。これは、人によってさまざまですが、所詮、アナリストとて人の子です。アナリスト資格の有無、 出身大学、MBAの有無、公認会計士資格の有無、著名かどうか、などなど全然関係ありません。しいて言えば、よく当たるアナリストの条件として考えられる のは、以下のようなところでしょう。

1)長く特定のセクターをカバー(できれば10年以上)し、生き残ってきたアナリスト。(経験が長くても相場観ゼロのアナリストもいっぱいいますけど)

2)バイサイドのアナリスト・ファンドマネージャー経験者。
(運用会社では「当てる」ことが大切です。証券会社では「合理的に説明できること」が大切になり、相場を当てることは二の次になります)

3)IB部門の弱い欧州系証券会社。
(日系大手と米系大手は、引受部門への配慮から、「売り」はほとんど付けられず、ファイナンス銘柄は「買い」になります)

特に注意すべきことは、著名なアナリストの推奨が当たりやすいとは限らないこと。セルサイドのアナリストは、推奨が当たったかどうかで評価はされな いので、ハズレまくりのアナリストでも、有名になれます。なんせ、「○○さんは、業界トップとのコンタクトも十分だし、プレゼンテーションもすばらしいけ ど、銘柄は外しまくり」ってことで著名な著名アナリストはゴロゴロいますから。むしろ、相場に関係なく万年弱気のストラテジストとか、万年強気のアナリス トとか、、、業界って変人ばっかり。そう、歌手と同じです。歌がうまければレコード大賞を取れるとか、グラミー賞を取れるとか、全然関係ありません。

まともなアナリストの買い推奨は、50%~80%くらいは当たる、と考えて間違いはないでしょう。これは、相場が一方向に動いている(強気相場)と きは当たりやすく、混迷しているときは、ほとんど当たらない、ということです。また、HOLD推奨は、判断を投げているか、あるいは、主幹事絡みで SELLを付けられないときのネガティブな意見かのどちらかです。

SELLレーティングが当たるかどうかは、そのアナリストの熟練度合いによります。つまりSELLを付け慣れているアナリストと、SELLレーティ ングなんて考えたこともない人(日系大手や米系大手のように、IBDが強い会社の所属)とでは、雲泥の差が付きます。「SELLリコメンデーションを当て る」ということは、「相場の天井を予測できる」ということなんで、実はBUYレーティングよりも難しいんです。ちなみにバイサイドでは、買った株を利食っ てナンボの世界なんで、SELL(Take Profitとも言う)推奨が非常に重要です。

あと注意することは、「どんなレーティングがついているか」、ではなくて、「いつレーティングを変えたか」です。アナリストはレーティングを株価の 変動にあわせて頻繁に変えることはしません。「今後12か月~18か月以内」の株価の変動を予想してレーティングをつけることになっています。だから、ア ナリストがレーティングをBUYからHOLDへ変更した、ということは、「株価が横ばいになる」ことを予想しているわけではなく、「株価が下がる」ことを 予想していることになります。同様に、SELLからHOLDは、株価が上昇することを予想している、というわけです。レーティング変更直後は、よっぽど相 場観のないアナリスト以外は、レーティングは当たりやすいと言えます。

ようするに、証券会社のレポートのレーティングは、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の世界である、ということです。それなら、一般投資家は何を信 じればいいのか? それは言うまでもなく、「自分自身の相場観」です。嘘をつくことは「どろぼう」の始まり、他人を信じることは「ネギ鴨」の始まりです。 そのうち、日本でも学校で「株式投資教育」が始まるんでしょうか? 学校の先生は「親であろうと、友達であろうと、人を信じてはいけないよ」って教えるい い機会です。

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(2001年3月3日記)

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