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2010.09.17

バイサイドアナリストの日々

生損保、信託銀行、投信会社、投資顧問などのいわゆる機関投資家に在籍しているアナリストを、バイサイドアナリストと呼びます。証券会社の調査部に 属しているアナリスト、つまりセルサイドアナリストとは、仕事内容はまったく異なり、両者は似て非なるものです。セルサイドアナリストは小説を書く人、バ イサイドアナリストは小説を読む人です。セルサイドアナリストはテレビ番組を制作するプロデューサー、バイサイドアナリストはテレビを見る人です。

証券会社は会社による格差は、それほど大きくはありません。それぞれの職種でやるべきことは大体同じで、GSの日本株営業マンとモルスタの日本株営 業マンとが違った仕事をしている、ということはありません。アナリストも同様です。野村の電機担当アナリストの書くソニーのレポートは、彼がGSに移って も中身は同じで、違うのは会社のロゴマークだけです。

しかしバイサイドは、千差万別です。A投資顧問とB投資顧問とでは運用体制が異なり、アナリストの日常生活も違うのが普通です。「バイサイドアナリストの日々はこうです」と十把一絡げには言えません。

アナリストの仕事の基本は、企業を調査し、定性的な情報を「企業価値」という定量的な情報に置き換えることです。それはセルサイドもバイサイドも同 じなのですが、情報をどこに出すか、が両者ではまったく違います。セルサイドがリサーチした結果は、顧客となる社外の機関投資家のFM(ファンドマネー ジャー)やバイサイドアナリストへ向けて発信されます。口頭でのコメントは、社内の株式営業マンへ伝えられ、営業が情報をFMへ伝えます。これに対してバ イサイドアナリストは、社内のFMへリサーチ結果を伝えます。決して他社のFMや、マスコミへ伝えられることはありません。

となると、運用サイドのFMは、情報をブローカーのセルサイドアナリストからもらっても、社内のアナリストからもらってもOK、ということになりま す。しかし、ほとんどのFMは、社外の自分のお気に入りのセルサイドアナリストからの情報を参考にしています。すぐ近くにアナリストが座っているにも係わ らず、です。なぜでしょう? 

いまどきのセルサイドアナリストのカバーする銘柄は15社くらいです。これに対してバイサイドアナリストは30社とか50社とか100社とか、ともかく一人当たり担当する銘柄数が圧倒的に違うのです。当然リサーチの「濃さ」は担当銘柄数に反比例します。

二番目に、マーケットへの影響力がまったく違います。著名なセルサイドアナリストのコメントは広くマーケット参加者へ伝えられ、彼/彼女が「売り」 といえば、その株は暴落し、「買い」といえば、暴騰するようになります。ま、それは短期的な現象ですけど、、、 一方、バイサイドアナリストのコメントや レポートがマーケットへ伝えられることはありません。当然、FMはセルサイドアナリストが何と言っているかに注意を払わざるを得ないのです。ある銘柄の マーケットコンセンサスは、セルサイドアナリストが形成してゆくものであり、マーケットコンセンサスを集計している会社(I/B/E/Sなど)はセルサイドアナリストのみから業績の予想データをもらいます。

三番目に、人材の質の差があります。バイサイドアナリストは一般に若く、経験不足であり、FMへの登竜門と位置付けている会社が多いのです。一方、 セルサイドアナリストは、一般に経験年数が長く、その分野のプロフェッショナルです。最近は経験を積んだセルサイドアナリストを雇用するバイサイドが増え てきました。しかし、バイサイドはぬるま湯環境であるため、かつてバリバリに鳴らしたアナリストも、何年もバイサイドにいると、ぼんくらのおばかになって しまい、自分で餌をとる力が削がれてしまいます。もちろんバイサイドにいる限りは、それでOKです。そうでないとセルサイドアナリストのお仕事がなくなっ てしまいます。

驚くべきことに、バイサイドアナリストの大半が、会社の運用体制やアナリストの処遇に不満を持っているようです。そして社内FMとの人間関係で悩ん でいます。「軽く扱われている、無視される、一生懸命調べても買ってもらえない、、、、」でも、それは、そういうもんなんです。バイサイドでは社内の数人 のFMにゴマをすらなくては生きて行けません。セルサイドでは、おばかでわがまま放題のFMは無視しても生きて行けます。手数料をいっぱい落としてくれる 熱烈なファンを掴めばいいからです。

職業には、向き不向きがあります。向かない仕事をすることほど辛いことはありません。バイサイドアナリストでハッピーだったら、それは結構。天職か もしれません。でもその前に、鏡で自分の姿を見てみましょうね。爪が丸まっていて、牙が抜かれていたら、それは単に自分がおばかになってしまっただけかも しれません。いったん飼いならされてしまった動物は、もはや大自然のなかで生き抜くことはできません。

「うちの会社が潰れたら社会問題だ」、「大蔵省が守ってくれるさ」、「うちの会社は運用資産が10兆円あるから大丈夫だ」 はい、そうです、おっしゃるとおりでございます。がんばってくださいね。

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(2000年12月19日記)

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